エムポックスウイルス(クレードIb)の妊婦感染症例の解析を実施 -国際共同研究により、エムポックスウイルスが胎盤を介して胎児に先天性感染することを発見-

令和7年6月24日
国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所


発表のポイント

  • 2023年にコンゴ民主共和国で出現したエムポックスウイルス(クレードIb)に感染した妊婦とその胎児・新生児におけるエムポックスウイルス感染について解析しました。
  • 妊娠初期、中期、後期の全ての時期の感染において、妊婦から児へのエムポックスウイルスの感染が確認されました。
  • 胎盤組織へのエムポックスウイルス感染が確認され、胎盤を介した先天性感染の直接的証拠が得られました。

概要

これまで妊娠中のエムポックスウイルス(クレードIb)(注1)感染と流産・死産との関連性が指摘され、胎児への先天性感染が懸念されていましたが、母体から胎児への垂直感染とその感染経路に関する証拠は限られていました。

本報告では、国立健康危機管理研究機構(JIHS)国立感染症研究所感染病理部の平田雄一郎研究員および鈴木忠樹部長(千葉大学大学院医学研究院 感染病態学 教授)のグループがコンゴ民主共和国・国立生物医学研究所Placide Mbala-Kingebeni教授、ベルギー・アントワープ熱帯医学研究所Laurens Liesenborghs 博士などとの国際共同研究により、コンゴ民主共和国内でエムポックスウイルス(クレードIb)に感染した妊婦とその胎児・新生児についてウイルス学的および病理学的な解析を実施しました。その結果、胎盤組織や児でのエムポックスウイルス感染と流産検体中の胎児組織へのウイルス感染がウイルス学的および病理組織学的に示されました。これにより、エムポックスウイルス(クレードIb)が胎盤を介して垂直感染することが明らかになりました。

この発見から、エムポックスウイルス(クレードIb)発生地域における妊婦への感染予防策と妊婦感染時対応策の整備とともに、エムポックスウイルス先天性感染のリスク評価に必要な知見収集のための研究推進が急務であることが強く示唆されます。

本研究成果は令和7年6月18日、国際科学誌『New England Journal of Medicine』に掲載されました。

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